呉信用金庫 広島西支店
用途: 信用金庫、事務所
場所: 広島県広島市
構造: 鉄骨二階
設計: (総合) kufu (構造) DN-Archi
photo by Koji Fujii

広島県の地域金融機関である呉信用金庫が地元呉市から離れた広島市内に14年ぶりに新店舗を出店するということで始まった計画である。
敷地は街の幹線道路に面して奥行きを持った平行四辺形型。道路は歩道があり周辺の飲食施設や学校へ行き交う子ども達や学生、高齢者たちで人通りが多い一方で道路から一本入ると閑静な住宅地となっている。
凱旋店舗となる本施設がこの地域とどう関わっていくか。
私たちは呉信用金庫が街に対して「知ってもらう」「親しみを持ってもらう」「やさしさを提供する」の3つを実現させることで、地域に寄り添い住民との結びつきを強くする施設になれると思った。それがこの先みんなに愛される建築として相応しいと考えた。

まず建物の配置は道路沿いにし、街にしっかりと“顔”を見せつつ利用客を迎えに行く姿勢とした。建物は2階までに低く抑え更に道路に面する2階の外壁を内側に傾斜させる。そうすることで歩行者に対し圧迫感を軽減させつつ、まるで地域の人々にそっと傘を差し出すようなあたたかい大庇へと視覚的に昇華させた。

1階は営業スペース、2階はプライベート応接室と職員の管理スペースを計画。メインの入口には歩道と連続する庇下空間を造り、そこに内外を横断する小判形ベンチを設け地域にくつろぎスペースとして提供している。
エントランスを入ると「マネぶらりー」と呼ぶ待合スペースがある。そこにはお金にまつわる本がたくさん用意されており、信用金庫に用がなくても誰でも気軽に立寄り読むことができる。

地域だけでなく環境にもやさしい施設を目指し、営業窓口の間仕切りや光天井等の家具の一部にCO2排出の無いカーボンニュートラルな竹材を採用した。庇下の小判形ベンチには呉で作られた竹チップが骨材として練り込まれており、街の景観としても表情豊かなスペースとなるように配慮した。

更に信用金庫の地元である呉市の魅力が紹介ができる金融施設とするために、大庇には呉の倉橋産の議院石を採用した。国会議事堂の外壁材にも使われたことから議院石と名づけられていて、経年とともにピンク色に色づいてくる特徴がある。100周年を迎える呉信用金庫に相応しい建材だと思った。
正面入口は中間期には開放したままにも出来る大開口とし、営業中はのれんを設えている。のれんには昔使われていた呉信用金庫の庫章を今回リバイバルして家紋のように採用し、100年間継承されてきた想いも込めた。

呉信用金庫という地域金融機関が街に対してやさしく開いていく建築を、柔らかいのれん一枚を隔てて内外を繋ぎ体現することで、たくさんの人の信頼の拠点になることを望む。
