はこ / 2018

用途: 個人住宅
場所: 広島県広島市
構造: 木造 2階 +離れ
設計: (総合) kufu
            (構造) DN-Archi
 
photo by Koji Fujii

本計画地は小高い山の上の中腹にあり、眼下には街並み、周囲は山に囲まれた緑豊かな環境。
私達が初めてこの敷地を訪れた時、この眺望を最大限に生かし、それらをできるだけ家の中に引き込みたいと考えた。しかし、この計画地はその立地ゆえにいくつかの課題について考える必要があった。
まず、現地までは幅員2.5m程度しかない私道を山のふもとから登ってくる必要があった。工事車両が近接出来ない事から、人力で運べる部材のみの使用が条件となる。
まさにどう魅せるか、よりもどう創るか、に主眼を置いた立地条件であると言える。
更に敷地内には高さ4mの既存石積擁壁がありその繋がりは完全に分断されていた。
私たちはこの分断された2つの土地を再び繋げ敷地全体を行き来できる方法を模索し、建物の上を駆け上がるという手法に辿りついた。擁壁や山というスケールに対して、建築的には階段のように小さな要素を上がるのではなく"はこ"と呼べる土木と建築の中間のようなスケールで対峙させた。その箱を斜面に馴染むように僅かにずらし積上げることで視覚的にも上下を繋ぐような外観とした。
建物の構成は、離れと母屋の2棟。
建主より母屋には多様な広間スペースを望まれたため、下足のまま内外一体利用できる土間スペースを入口として設け、そこをキッチンダイニングとした。ここが家族や訪れた人達にとって超絶的に居心地のいい場となるように、入口間口は6mに広げて内外の境を意識させずに眼下に広がる絶景を取りこめるようにした。この開口のまぐさには人力でも運べる合成梁を採用することで大スパンを実現させている。
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階に来訪者に開いた機能を持たせたこととは対称に、2階には寝室や浴室といったプライベートな機能を配置した。それらは靴を脱ぐという行為によって緩やかにパブリックからプライベートへ変化する。

建物内は吹抜けを介して一体空間で構成され、建具や間仕切りも極力設けず全体的に閉じた部屋が無いようにした。内部の様々なシーンが繋がり、どこにいても家族の気配が感じられる家となった。
積み重ねられた箱のずれ方を少し工夫する事によって、随所に生まれた隙間からは街・山・空が垣間見え、天井や床の高さにも変化が付き様々な表情のある空間ができた。

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